バロンを語る上で絶対に外せないのが、名作『耳をすませば』との深い繋がりだ。地球屋の片隅で静かにたたずんでいたあの緑の瞳を持つ猫の置物が、時を経て再びスクリーンで躍動する。この華麗な復活劇には、スタジオジブリと原作者・柊あおいによる特別な創作のリレーがあった。
そもそも『猫の恩返し』は、かつて『耳をすませば』の主人公・月島雫が成長して書き上げた物語というメタ構造の裏設定を持つ。徳間書店から刊行された原作漫画『バロン 猫の恩返し』の誕生を後押ししたのは、他でもない宮崎駿の「雫が書いた物語として作ってみてはどうか」という一声だった。少女の瑞々しい空想がひとつの映画へと結実したからこそ、本作にはどこか懐かしく、甘酸っぱい青春の残り香が漂っている。