カルデラ湖を実際に訪れ、カヌーや遊覧船で沖合へと漕ぎ出すと、多くの人が湖面の「色の深さ」と「底の見えなさ」に息を呑みます。一般的な平野部の湖沼(汽水湖や潟湖)が緑がかった濁りを見せるのに対し、カルデラ湖の多くは抜けるようなコバルトブルー、あるいは吸い込まれそうなディープネイビーを呈しています。
この圧倒的な透明度と深い色彩を生み出している最大の要因は、カルデラ湖特有の「すり鉢地形」と「貧栄養状態」にあります。
マグマ溜まりの陥没によってできたカルデラ湖は、湖岸からわずか数メートル沖に出ただけで水深が数十メートルから百メートル以上へと急激に切れ落ちる「ドロップオフ(水中崖)」を有しています。このため湖底に日光が届く範囲が狭く、水生植物が過剰に繁殖しません。
さらに、多くのカルデラ湖は外輪山(カルデラの周囲を取り囲む火山の壁)に囲まれているため、外部から生活排水や農業排水を含む大規模な河川が流入しにくく、湖水に含まれる窒素やリンなどの栄養塩が極端に少ない「貧栄養湖(ひんえいようこ)」となります。植物プランクトンの発生が抑えられることで浮遊物が存在せず、太陽光のうち波長の長い赤色の光が水に吸収され、波長の短い青色の光だけが散乱・反射されるため、いわゆる「支笏湖ブルー」と呼ばれるような独特の青色が視覚化されるのです。
現地をフィールド調査するカヤックインストラクターや地質研究者の記録によると、「湖岸から数漕ぎしただけで、エメラルドグリーンの浅瀬から一瞬で底が見えない漆黒の青へと切り替わり、大地が底抜けした歴史を肌で実感させられる」と証言されています。また、水深が360メートルを超える支笏湖では、あまりに膨大な水量を保持しているため、真冬に氷点下10度を下回る厳しい寒波に襲われても水面が冷え切らず、対流によって湖水全体の温度が約4度前後に保たれ、冬期でも結氷しない「日本最北の不凍湖」としての特異な生態系を維持しています。