「この盤、本当にこの値段でいいのか?」
都内の棚を掘っていたアメリカ人のバイヤーが、盤面のコンディションを透かし見ながら低く呟いた。彼の手元にあったのは、山下達郎の1980年代の名盤『FOR YOU』のオリジナル初期プレスだ。かつて日本のリサイクルショップで数百円で転がっていた盤が、いまや世界中のコレクターの間で数万円、状態が良ければ数十万円で取引される。
80年代の都市生活を彩った都会的なサウンド、そして90年代を席巻した小沢健二やコーネリアスに代表される「渋谷系」の作品群。これら日本のシティポップは、音楽売買プラットフォーム Discogs を通じて世界中のリスナーへ拡散した。海外のDJたちがこぞって和モノのレア盤を買い漁る結果、国内のショップでは文字通り「棚が空になる」事態が頻発している。もはやこれは一時の流行ではない。世界的な音楽史の再評価運動なのだ。