日本酒「浦霞」の歴史と由来を語る上で欠かせないのが、陸奥国一の宮として崇敬を集める鹽竈神社(しおがまじんじゃ)との深い絆です。株式会社佐浦の創業は江戸中期の享保9年(1724年)。伊達藩の命を受け、鹽竈神社への御神酒を献上する酒蔵として酒造りを開始したことが、その輝かしい歴史の幕開けとなりました。
「浦霞」という風雅な銘柄名は、鎌倉幕府の第3代将軍・源実朝が編纂した私家集『金槐和歌集(きんかいわかしゅう)』に収められた名歌に由来しています。
「塩釜の 浦の松風 霞むなり 八十島かけて 春や立つらむ」
松島湾に浮かぶ島々にかすみたなびく春の情景を詠んだこの一首から名付けられた酒名は、まさに優美でたおやかな味わいを象徴しています。歴代の蔵元と杜氏は「品格のある酒」を目指し、昭和の銘杜氏・平野重一氏らによって築かれた南部杜氏の伝統技術を愚直に継承。単なる嗜好品にとどまらず、宮城・塩竈の風土と祈りの文化を今に伝える存在として、日本酒文化史にその名を刻み続けています。