「一寸先は闇」という言葉が、現代のビジネスパーソンや一般層に強いインパクトを持って再認識された背景には、昭和の政治史における決定的な名言としての存在があります。
自民党副総裁を務め「政界の一寸先は闇」というフレーズを世に知らしめたのが、党内きっての策士として鳴らした川島正次郎(かわしま しょうじろう)です。
権力の頂点から一夜にして転落する政界のリアリズム
1960年代から1970年代の高度経済成長期、自民党内の派閥抗争は熾烈を極めていました。派閥の領袖たちが綿密に票読みを行い、盤石と見られた総裁選の本命候補が、前夜の密約や寝返りによって一夜にして敗北する激動のドラマが繰り返されていたのです。
川島正次郎は、目まぐるしく変化する人間関係や権力構造の脆さを指して「政治の世界は一寸先は闇だ」と喝破しました。単なる悲観論ではなく、「どんなに優勢に見えても油断すれば足元をすくわれる」「最後の最後まで何が起きるか分からないからこそ、万全の手を打て」という、百戦錬磨の政治家ならではの冷徹な勝負勘と戒めが込められています。