風邪、インフルエンザ、あるいは新型コロナウイルス感染症などの急性呼吸器感染症にかかると、病原体によって気道の上皮細胞(粘膜の表面)が広範囲にわたって損傷を受けます。病原体そのものは免疫反応によって数日から1週間程度で体外へ排除されますが、傷ついた気道粘膜が完全に再生・修復されるまでには数週間単位の時間を要します。
粘膜が剥がれ落ちて剥き出しになった気道には、咳反射を司る神経線維(C線維や知覚神経受容体)が密集しています。健康な状態であれば何の問題もない「冷たい外気」「エアコンの風」「会話による空気の出入り」「タバコの煙」「わずかな埃」といった微細な刺激に対して神経が過剰に反応し、激しい咳反射を引き起こしてしまうのです。これが、炎症の原因物質がいなくなっても咳だけが続く「気道過敏性の亢進」の正体です。
日本呼吸器学会が策定した『咳嗽・喀痰の診療ガイドライン』では、咳の持続期間に応じて以下のように分類しています。
- 急性咳嗽(3週間未満):かぜ症候群をはじめとする急性感染症が最多。
- 遷延性咳嗽(3〜8週間):感染後咳嗽が最も多いが、咳喘息やアトピー咳嗽の初発も多発する過渡期。
- 慢性咳嗽(8週間以上):感染症以外の原因(咳喘息、副鼻腔気管支症候群、胃食道逆流症など)が主因となる領域。
感染後咳嗽は、まさにこの「遷延性咳嗽(3〜8週間)」の代表格として位置づけられています。