本名・胡桃沢梅(くるみざわ うめ)。自分の「梅」という名前を嫌い、可愛らしい「くるみ」という愛称を武器に周りを惹きつけてきた彼女は、登場初期、誰もが認める計算高き「悪役」だった。完璧な美少女の仮面を被り、陰で策を弄して主人公・黒沼爽子と風早翔太の仲を裂こうとする姿は、読者の反発を買うのに十分なインパクトを残した。
しかし、原作者の椎名軽穂が描いたのは、単なる平面的なライバル役ではなかった。学園ラブコメディという枠組みの中で、彼女の狡猾さの裏にある孤独、努力、そして素直になれない不器用さが丁寧に紐解かれていく。爽子に対して自分の本心をぶつけ、正面から失恋を受け止めた瞬間、彼女は「憎めない悪役」から「誰よりも泥臭く自分と向き合うヒロイン」へと昇華したのだ。少女漫画の伝統的な敵役像を劇的に塗り替えた瞬間と言える。