運動生理学において、運動は「呼吸をしているかどうか」ではなく、筋肉を動かすエネルギー源(ATP=アデノシン三リン酸)を再合成するプロセスの違いによって明確に分類されます。無酸素運動とは、筋肉内に蓄えられたグリコーゲン(糖質)やクレアチンリン酸を使い、酸素を介さずに瞬発的な出力を生み出す運動形態のことです。
体内には主に3つのエネルギー供給機構が存在します。運動開始から数秒間の最大出力を支える「ATP-CP系」、数十秒から1分強の全力運動を担う「解糖系(乳酸系)」、そして長時間の持続的な運動を支える「有酸素系(酸化系)」です。このうち、酸素の供給を待たずに爆発的な力を発揮する前者の2系統を総称して無酸素運動と呼びます。
これに対し、ウォーキングやジョギングに代表される有酸素運動は、酸素を取り込みながら主に体脂肪や血中グルコースを燃焼させてATPを生成します。負荷が低〜中強度であるため長時間持続できる反面、筋肉そのものを肥大させたり、神経系の出力を極限まで高めたりする刺激としては不十分です。両者の決定的な差異は、「運動中に消費される基質(糖か脂肪か)」と「筋繊維にかかる機械的・化学的ストレスの大きさ」に集約されます。