最新のスポーツバイオメカニクス研究において、跳躍の主役は筋肉そのもの以上に「アキレス腱をはじめとする腱組織の剛性(スティフネス)」であるという見解が定着しています。その中核をなす生理現象が、SSC(ストレッチ・ショートニング・サイクル:伸張―短縮サイクル)です。
SSCとは、筋肉が引き伸ばされながら力を発揮する「エキセントリック局面」の直後に、脊髄反射(伸張反射)と腱の弾性エネルギーを利用して、一瞬で強力な短縮運動(コンセントリック局面)を引き起こすメカニズムを指します。いわば、引き絞った輪ゴムを一気に解放して遠くへ飛ばすような原理です。アキレス腱が硬くしなやかなバネとして機能していれば、筋肉自体のエネルギー消費を最小限に抑えつつ、凄まじい推進力を生み出すことができます。
しかし、バネがどれほど優れていても、土台となるエンジンの出力が小さければ大きな力は生まれません。ここで重要となるのが、下半身後面のエンジンである大臀筋とハムストリングスの強化です。股関節を一気に伸展させる大臀筋は、人体の中で最も体積が大きく、最大のトルクを生み出す筋肉です。さらに、跳躍の踏み切り直前において、骨盤を安定させ体幹からのパワーロスを防ぐとともに、空中で膝と骨盤を上方へ瞬時に引き上げる腸腰筋の働きが、最高到達点を数センチ押し上げる決定打となります。