テレビ関係者やライブプロデューサーの間で、長年ささやかれている定説があります。それが「キングオブコントブレイク芸人の真相」にまつわるパラドックスです。なぜ、優勝を逃した準優勝者や、時に1stステージで敗退したコンビのほうが、大会直後のテレビ番組出演本数やCM契約数を大きく伸ばすケースが後を絶たないのでしょうか。
番組制作ディレクターへの取材とSNS・ネットコミュニティ(Xや5ちゃんねる等)のリアルな反響を照らし合わせると、そこにはテレビ業界特有の「起用ハードルの力学」が存在することが分かります。
「優勝者」には、翌日から「王者」としての完成された佇まいと、あらゆるワイドショーやバラエティを一周する義務が生じます。そこでは即座に平場のトーク力やエピソードの強さが試され、期待値が高すぎるあまり、少しでもトークで躓くと「今年の王者はテレビ向きではない」という過酷な烙印を押されがちです。ある民放プロデューサーは次のように現場の実情を明かします。
「実のところ、バラエティ番組のひな壇やロケで最も重宝されるのは、優勝の一歩手前で『惜しくも散った愛すべき敗者』です。ザ・マミィの酒井貴士さんや、ジェラードンのアタック西本さん・かみちぃさんのように、ネタで強烈なキャラクターを印象づけつつ、トークではイジられ役に回れる隙がある芸人のほうが、MC陣としても絡みやすい。完璧な芝居で圧倒した王者よりも、ちょっと情けない敗者のほうが、テレビというメディアにおいて消費者の共感を得やすい構造があるのです」
視聴者の間でも、「ネタの芸術性を突き詰めたコンビ」をリスペクトし劇場へ足を運ぶ層と、「SNSの切り抜きやショート動画で手軽に笑えるキャラ」を求めるライト層との間に明確な分化が起きています。大会の順位とブレイク指数の乖離は、芸人の実力不足ではなく、ネタの鑑賞体験(劇場型)とキャラクターの消費体験(テレビ・SNS型)のギャップから必然的に生じている現象と言えます。