1960年代初頭、テレビの普及に伴い東映のドル箱であった時代劇映画は急速に観客動員を落としていました。その危機的状況を打破すべく舵を切ったのが、「義理と人情」「耐え忍んだ末の殴り込み」を定型とした現代劇、すなわち任侠映画路線への大転換です。
口火を切ったのは1963年の『人生劇場 飛車角』でした。鶴田浩二が演じた飛車角の哀愁漂う着流し姿は民衆の心を鷲掴みにし、続いて登場した高倉健主演の『日本侠客伝』(1964年)によって、任侠映画は東映の絶対的支柱としての地位を確立します。理不尽な悪徳ヤクザに虐げられた庶民のために命を捨てる主人公の姿は、高度経済成長の影で孤軍奮闘していた当時の労働者層や学生たちの心情と深くシンクロし、熱狂的な支持を集めました。