危険かつ景観を損ねる廃墟でありながら、なぜホテルセリーヌは現在も解体されずに残り続けているのでしょうか。そこには、全国の危険廃墟が直面している深刻な法制度と費用の壁が立ちはだかっています。
第一の要因は、所有者の特定と権利関係の複雑さです。閉業から数十年が経過し、元の経営者が死亡している場合、相続人が相続放棄をしていたり、連絡がつかない「所有者不明」の状態に陥っているケースが少なくありません。憲法で私有財産権が強く保護されている日本では、行政であっても民間の建物を勝手に解体することは法的に極めて困難です。
第二の要因は、莫大な解体・撤去費用です。大型のコンクリート建築物を解体し、産業廃棄物として適切に処理するには数千万円から1億円近い費用が発生します。特に古い建物の場合、アスベスト(石綿)が使用されている可能性が高く、その除去作業にはさらに多額のコストが上乗せされます。自治体(信濃町)の限られた予算を、私有地の廃墟解体に充てることは住民の合意形成の面からも容易ではありません。