日本のゾンビ映画を語る上で避けて通れない2大潮流が、破格の本格描写を実現した『アイアムアヒーロー』と、構造の奇跡と称された『カメラを止めるな!』です。
佐藤信介監督がメガホンを取った『アイアムアヒーロー』の評判は、公開直後から映画ファンを震撼させました。日本国内ではコンプライアンスや撮影許可の壁から実現困難とされていた高速道路封鎖シーンやショッピングモールでの大規模パニックを、韓国ロケを敢行することで突破。何より特筆すべきは、感染者「ZQN(ゾキュン)」の造形です。生前の記憶や執着を壊れたレコードのように繰り返し呟きながら人間を襲う姿は、単なる肉食モンスターではなく「日常の成れの果て」としての不気味さを強烈に放ち、特殊メイク・特殊造形チームが手掛けた破壊描写は鑑賞者に深いトラウマを刻み込みました。
一方、都内2館のミニシアター上映から口コミだけで全国300館規模へと拡大した『カメラを止めるな!』は、ホラーというジャンルそのものを批評的に解体・再構築した金字塔です。冒頭のワンカットゾンビサバイバルから一転、中盤以降で明かされるバックステージのドタバタ劇は、映画制作という集団創作の狂気と愛を描き切りました。観客が恐怖から爆笑、そして最後には熱い感動へと導かれるカタルシスは、既存のゾンビフォーマットを逆手に取った天才的な構成として映画史に刻まれています。