かつて医療の世界では「年齢+90」を最高血圧の目安とする俗説が広く信じられていた。70歳なら160mmHgでも許容範囲という理屈だ。しかし、この甘い見通しは現代の臨床現場では完全に否定されている。
加齢によって血管壁の弾力性が失われ、動脈硬化症が進行するのは生理的な現象に違いない。しかし、血管が硬くなったからといって高い圧力をそのまま放置すれば、脳や心臓、腎臓の毛細血管網はひとたまりもなく損壊する。特定非営利活動法人日本高血圧学会が策定を重ねてきた知見においても、高齢者であっても厳格な血圧コントロールが心血管病の発症率を大幅に引き下げることが証明されている。
「年だから高いのは当たり前」ではない。「年を重ねて血管が脆くなっているからこそ、過度な負荷をかけないよう適正値に抑え込む」――これが現代医学の明確なコンセンサスだ。