毎年5月から6月にかけての田植え直後、澄んだ水が張られた水田の泥底を忙しなく泳ぎ回る姿が観察されます。日本国内で確認されているカブトエビには、主にアメリカカブトエビ、アジアカブトエビ、ヨーロッパカブトエビの3種類が存在します。
日本の生息地としては、関東以西から関西、瀬戸内、九州地方の水田地帯に広く分布しています。特に西日本や温暖な平野部の穀倉地帯において、地域ごとに優占する種が定着している実態が農業試験場の生態調査等で報告されています。
雑草を抑え害虫を捕食する「田んぼの草取り虫」
農家の間では古くから、カブトエビは稲を食害する害虫ではなく、極めて有益な「益虫」として親しまれてきました。その生態的メリットは主に3点挙げられます。
- 濁水効果(遮光による除草):無数にある脚(鰓脚)を使って泥底を激しく掘り返しながら泳ぐため、田んぼの水が常に茶色く濁ります。これにより太陽光が水底に届かなくなり、雑草の種子の発芽や光合成を物理的に抑制します。
- 雑草の掘り起こし:泥の中の有機物や微細藻類を食べる際、発芽直後のコナギやホタルイなどの水田雑草の根を掘り起こして枯死させます。
- 害虫の捕食:雑食性であるため、ボウフラ(蚊の幼虫)やユスリカの幼虫などを積極的に捕食し、衛生害虫の発生を防ぎます。
有機栽培や無農薬・減農薬栽培に取り組む稲作農家の間では、「カブトエビ農法」としてその除草能力が高く評価されており、持続可能な農業を支える貴重なパートナーとして活用されています。