森七菜のビジュアルワークを語る上で欠かせない金字塔が、高校生活最後の年に撮影がスタートし、2020年に刊行されたファースト写真集『Peace』です。写真家・川島小鳥氏をはじめとする気鋭のクリエイター陣が、出身地である大分県や東京での日々を長期にわたり密着撮影した本作は、350ページを超える大ボリュームで制作されました。
当時のインタビューや関係者の証言によると、撮影現場では作り込まれたポージングや過度なライティングは極力排除され、「日常の延長線上にある素の姿」が徹底してフィルムに収められました。制服姿でラーメンを頬張る姿、温泉街での無邪気な笑顔、ふとした瞬間に見せる大人びた憂いなど、彼女の撮り下ろしカットの一枚一枚には、演技では表現しきれない生々しい息遣いが刻まれています。
商業的なアイドルグラビアの定石を覆し、「ひとりの人間が少女から表現者へと羽ばたく記録」として編纂されたこの作品は、写真集ランキングで首位を獲得しただけでなく、アートブックとしての評価も確立しました。このときに提示された「作り込まないありのままの魅力」こそが、その後の彼女のグラビア展開における確固たる基盤となっています。