そもそも、なぜ星の砂はあれほど美しい星形をしているのでしょうか。一般的な砂浜の砂は、花崗岩や玄武岩などの鉱物、あるいはサンゴや貝殻が波の力で細かく砕かれた破片です。しかし、星の砂の生物学的正体は「有孔虫(ゆうこうちゅう)」と呼ばれる単細胞の原生動物の殻(炭酸カルシウム)です。
八重山諸島の浅瀬に生息する「ホシズナ(学名:Baculogypsina sphaerulata)」や「タイヨウノスナ」は、海藻やサンゴの表面に付着し、光合成を行う微細な藻類と共生しながら生きています。寿命を終えて死骸となった後、波に洗われてトゲ状の突起を持つ殻だけが砂浜へと打ち上げられたものが、私たちが目にする「星の砂」です。
ところが現在、カイジ浜の星砂は「以前と比べて圧倒的に見つけにくくなった」と現地ガイドや長年のリピーターが口を揃えます。その激減には、二つの明確な構造的要因が存在します。
第一の要因は、昭和40年代から平成にかけて押し寄せた観光ブームによる「人為的な持ち去り」の累積です。年間数十万人規模の観光客が「少しだけなら」とビニール袋やペットボトルに砂を詰めて持ち去り続けた結果、波打ち際に堆積していた数十年・数百年の蓄積が枯渇しました。
第二の要因は、海水温の上昇とサンゴ礁生態系の劣化です。環境省のモニタリング調査等でも指摘されている通り、近年の海洋熱波に伴う大規模なサンゴ白化や藻場環境の変容により、有孔虫が生息・増殖できる海洋基盤そのものが縮小しています。新たに供給される星砂のスピードが、流出や摩耗のスピードに追いついていないのが2026年現在の冷酷な現実です。