昭和初期から戦後にかけての日本文学界において、太宰治と芥川龍之介の自死は時代の転換点を象徴する大事件だった。『ぼんやりとした不安』を言い残して死を選んだ芥川と、玉川上水で命を絶った太宰。二人の死は、近代化に喘ぐ日本人の精神的危機そのものだった。
太宰の『人間失格』や『斜陽』に漂う破滅的な気配は、戦後の価値観崩壊に直面した人々の心理を鋭く穿っていた。一方、芥川の死は東洋と西洋の文化の板挟みになった知性人の敗北としても読める。彼らが命を賭して問いかけた人間性の問題は、現代の私たちが抱える孤独や生きづらさとも直結しているのだ。