電波干渉の問題がテクノロジーによって解決された現在、航空会社や航空安全委員会が最も神経を尖らせているのが、完全ワイヤレスイヤホン本体および充電ケースに内蔵されたリチウムイオンバッテリーによる火災インシデントです。
長時間のフライト中、うたた寝をして耳から外れたイヤホンや、手元から滑り落ちた充電ケースが、電動リクライニングシートの金属製可動パーツの隙間に滑り込んでしまう事案が世界規模で急増しています。焦った乗客がイヤホンを探そうとして座席を電動で前後・リクライニングさせた瞬間、強固な金属フレームのテコ機構によってバッテリーセルが強烈に押し潰され、ショート・熱暴走を起こして激しい白煙や炎を噴き上げる危険な事故が複数報告されています。
上空を飛行中の密閉空間において、リチウムイオンバッテリーの熱暴走による有毒ガスや発火は、墜落に直結しかねない重大脅威です。そのため、離陸前の機内アナウンスでは「座席の隙間に電子機器を落とした際は、ご自身で座席を動かさず、必ず客室乗務員をお呼びください」という文言が執拗に繰り返されるようになりました。「小さな耳栓サイズの機器だから自分で取れる」と安易にシートを操作する行為は、航空安全を脅かす極めてハイリスクな行動であるという認識を持つ必要があります。