『僕のヒーローアカデミア』屈指のヴィランである死柄木弔の声を担当しているのは、劇団ひまわり所属の内山昂輝です。数々の作品でクールな青年や影を抱えるキャラクターを演じてきた内山ですが、死柄木弔という役柄はそのキャリアの中でもひときわ異彩を放っています。
物語初期の死柄木は、精神的に未成熟な「子どもがそのまま強大な力を手に入れたような苛立ち」を抱えており、常に首を掻きむしりながら乾いた囁き声で話すのが特徴でした。内山はこの初期衝動について、当時のキャストインタビューで「感情の波が読めず、何を考えているのか測りかねる不気味さを意識した」と述懐しています。皮膚が擦れるような乾いた声色、息遣いひとつに至るまで計算された演技は、視聴者に生理的な不快感と底知れぬ恐怖を植え付けました。
しかし、シリーズが進むにつれて死柄木は単なるチンピラ的ボスから、仲間を認め、自らの信念のもとに破壊を志す「真の指導者」へと覚醒していきます。それに呼応するように、内山昂輝のエッジの効いた低音は深みを増し、重厚な覚悟を帯びた声へとシフトしていきました。死柄木弔の声優・内山昂輝という起用は、キャラクターの内面的成熟と破滅への疾走を描き切るうえで、まさに必然のキャスティングであったといえます。