旅行予約サイトや旅行記ブログで常に最高峰のスコアを維持し続ける向滝。旅行業界の関係者からも「一度は泊まるべき日本の宿」として必ず名前が挙がる背景には、現代の合理化された宿泊施設では絶対に真似のできない、3つの明確な強みがあります。
第1の魅力は、国の登録有形文化財第1号に選定された木造建築そのものです。敷地内に足を踏み入れた瞬間、飴色に磨き上げられた廊下、精緻な組子細工の障子、職人の手仕事が息づく手すりや梁が迎えてくれます。斜面に沿って建てられた複雑な回廊構造は、さながら時代劇の舞台に迷い込んだかのような錯覚を覚えるほど。中庭を囲む洗練された数寄屋造りの景観は、四季折々に異なる風情を絵画のごとく切り取ります。
第2の魅力は、手を一切加えない「本物の温泉」です。向滝の名物風呂である名湯「きつね湯」は、湯船の底や岩肌から自噴する源泉を空気に触れさせず直接引き込んでいます。加水も加温も循環も一切行わない源泉100%の湯は、キリリと熱めで、肌に吸い付くような柔らかな湯触り。もうひとつの大浴場「さるの湯」や貸切風呂でも、湯守が毎日の気温や湯量を計算し、絶妙な湯加減を守り抜いています。
第3の魅力は、素朴でありながら滋味深い会津の食文化を伝える料理です。なかでも夕食の主役を飾る伝統料理「鯉の甘煮」は、清流で泥抜きされた肉厚な鯉を、継ぎ足しの秘伝タレで数時間じっくり煮込んだ逸品。川魚特有の泥臭さは一切なく、こってりとした甘辛さと鯉本来の旨味が口いっぱいに広がります。会津若松が誇る地酒のラインナップも秀逸で、酒処・福島の真髄を心ゆくまで堪能できる設計になっています。