1998年の開業以来、四半世紀にわたって湘南の湯治場として親しまれた「野天湯元 湯快爽快 ちがさき」は、2023年3月31日24時をもって営業を終了しました。突如として発表された閉館の知らせは、長年の常連客やサウナ愛好家の間に大きな衝撃を与えました。
運営会社からの公式発表および業界関係者への取材によると、閉店に至った決定的な理由は主に3つの構造的要因に集約されます。
第1の要因は、「25年間の定期借地契約の期間満了」です。1990年代後半にオープンしたスーパー銭湯の多くは、20年から25年の事業用借地権を設定して営業を開始しています。契約満了に伴う更新交渉において、地権者側の土地活用方針との兼ね合いから、契約延長に至らなかったことが最大の契機となりました。
第2の要因は、「大規模な設備更新に伴う莫大なコスト」です。地下約1,500メートルから汲み上げる塩化物強塩温泉は高い効能を誇る反面、配管やポンプの腐食スピードが非常に速いという特性を持ちます。開業から25年が経過し、ボイラーや濾過装置、露天風呂の躯体改修には数億円規模の設備投資が必要な時期を迎えていました。
第3の要因として挙げられるのが、「光熱費・原油価格の歴史的高騰」です。2022年以降のエネルギー価格急騰は、大量の重油や都市ガス、電力を消費する温浴ビジネスの収益構造を激しく圧迫しました。仮に大規模改修を行って契約を延長したとしても、投資回収の見通しが立ちにくい経営環境が、閉館の決断を決定づけたといえます。