昭和レトロな粉末ジュースの素はなぜ消えた?販売中止の真相と現在の入手先

昭和レトロな粉末ジュースの素はなぜ消えた?販売中止の真相と現在の入手先

昭和レトロな粉末ジュースの素はなぜ消えた?販売中止の真相と現在の入手先についての真相をご紹介します。

空前のブームを巻き起こした粉末ジュースの素は、なぜ突如として表舞台から姿を消したのでしょうか。市場撤退や衰退の背景には、食品衛生基準の転換と、日本の生活インフラの急激な近代化という「2つの決定打」が存在します。

最大の転換点は、1969年(昭和44年)に下された人工甘味料「チクロ(サイクラミン酸ナトリウム)」の使用禁止措置です。当時、粉末ジュースの素や清涼飲料水には、砂糖の数十倍から百倍近い甘味度を持ち、低コストで湿気にも強いチクロが広く使用されていました。しかし、アメリカで発がん性や催奇形性の疑いが報じられたことを受け、日本の厚生省(現・厚生労働省)も即座に使用禁止を決定しました。

メーカー各社は砂糖やブドウ糖、サッカリン等への原材料転換を余儀なくされましたが、砂糖を主成分にすると粉末が吸湿して固まりやすくなり、価格も跳ね上がるという致命的な製造課題に直面しました。このチクロショックにより、渡辺製菓をはじめとする多くの粉末ジュースメーカーが経営危機に陥り、主力商品の製造中止や企業買収へ追い込まれたのです。

さらに追い討ちをかけたのが、日本の高度経済成長に伴う生活家電の普及と流通革命です。昭和40年代に入ると電気冷蔵庫の家庭普及率が90%を超え、いつでも冷たい飲み物を家庭で冷やして保存できるようになりました。自動販売機の爆発的な普及や、コカ・コーラをはじめとする缶入り炭酸飲料、果汁100%ジュースが安価に流通したことで、「わざわざ粉を水で溶かして飲む」という手間の必然性が失われていきました。

松本 悠斗
著者

松本 悠斗

マネー知識やキャリア形成に役立つノウハウを、初心者にも分かりやすく解説するのが得意です。