そもそも、なぜ同一形状の食品に2つの名前が存在するのか。その理由は江戸時代に確立された関東関西の地域差と伝統的な製法の違いにあります。
関東地方で生まれた「しらたき(白滝)」は、江戸時代中期に考案されました。こんにゃく芋の精粉(せいふん)を水で溶いたゲル状の液体を、細い穴から熱い石灰水の中に押し出しながら茹でて作られます。その際、細い白い筋が湯の中に流れ落ちる様子が「白い滝」に見えたことから「白滝」と命名されました。江戸の洗練された町人文化の中で、白く細い見た目の美しさと口当たりの良さが好まれた背景があります。
一方、関西地方で発達した「糸こんにゃく」は、生芋をすりつぶして固めた通常の「板こんにゃく」を細く糸状に切り分ける製法が主流でした。関西では古くから味の染み込みやすさや歯ごたえを重視する傾向があり、板こんにゃくを包丁や専用のスライサーで細断して作られていた歴史を持ちます。
また、白滝と黒滝(黒こんにゃく)の違いにも地域文化が色濃く反映されています。関東では精粉を用いた濁りのない白いしらたきが好まれたのに対し、関西では生芋の皮やアラメ・ヒジキなどの海藻粉末を練り込んだ「黒い糸こんにゃく」が長年親しまれてきました。この地域差は2026年代半ばを過ぎた現在でも、東西のスーパーにおける陳列比率に色濃く残っています。