趣里のキャリアを語るうえで、2023年度後期に放送された朝ドラ『ブギウギ』は決定的な転換点となりました。「東京ブギウギ」で戦後日本を明るく照らした笠置シヅ子をモデルとするヒロイン・花田鈴子(福来スズ子)役。彼女は吹き替えなしで全編にわたり圧巻のジャズソングを歌い上げ、ラインダンスを踊り切りました。当時の制作統括も「彼女の魂を削るような歌唱シーンには、現場のスタッフ全員が息を呑み、涙した」と回想しています。
朝ドラで国民的な知名度を獲得した彼女が、次の一手として選んだのが2024年秋のドラマ『モンスター』(カンテレ・フジテレビ系)でした。常識にとらわれず、感情を排除して勝訴をもぎ取る型破りな弁護士・神波亮子役でGP帯単独初主演を務め、スズ子の陽気なエネルギーとは対極にある冷徹かつ知的な怪演を披露。視聴者や批評家から「この振れ幅こそが趣里の真骨頂」と絶賛を浴びました。
趣里の出演ドラマを振り返ると、TBS系『ブラックペアン』の無口で有能な看護師・猫田麻里役や、『リバース』での狂気を孕んだ妻役など、決して出番の多さに拘泥せず、爪痕を残すエキセントリックな役柄を愛してきたことがわかります。2026年の現在地において、彼女は「主役を張れる華」と「物語を引き締めるバイプレイヤーの狂気」を併せ持つ、唯一無二のトップ女優へと到達しています。