南鐐二朱銀には、大きく分けて1772年(安永元年/改元の関係で形式呼称は明和)から鋳造された「明和南鐐二朱銀(古南鐐)」と、1824年(文政7年)に幕府の財政再建を名目に改鋳された「文政南鐐二朱銀(新南鐐二朱銀)」の2種類が存在します。
両者の最大の違いは、銀含有率と品位、そしてサイズと重量にあります。「南鐐」とは本来、中国の古典に由来する「極めて上質な銀」を意味する言葉です。明和期はその名に恥じぬ約98%という驚異的な純度を誇りましたが、文政期になると幕府の出目(改鋳差益)獲得のために品位が約84%へと引き下げられ、重量も約25%軽量化されました。
特に古銭蒐集家を熱狂させるのが、刻印と手変わり詳細です。鋳造期間中、文字の彫刻を担当した彫金師の違いや鋳型の更新によって、文字の配置や筆運びに微細なバリエーションが生まれました。
例えば明和南鐐二朱銀では、表面の「以南鐐八片」の「鐐」の偏(かねへん)の形状や、裏面の「定」の文字の長さ、四隅を囲むドットの並び方によって「大型」「中型」「小型」、あるいは「中字」「細字」といった分類がなされています。銀座役人の検印である極印が珍しい位置に打たれた個体や、両面に文字が二重打ちされたようなエラー品は、古銭鑑定の評判が高い専門オークションにおいて、カタログ記載基準額を大幅に突破するプレミア価格で落札される事例が後を絶ちません。