全摘出後の身体において最も切実な課題となるのが、甲状腺ホルモンを外部から補い続ける継続的な薬物療法である。患者は毎朝、空腹時にレボチロキシンナトリウム(チラージンS)を生涯にわたって服用しなければならない。この一見単純に見える習慣が、予想以上に患者の日常生活や精神状態を圧迫する。
適切な投与量を維持するためには定期的な血液検査が不可欠であり、季節の変わり目や加齢、体重の増減によっても適正量は変化する。ホルモン値がわずかに不足すれば強烈な倦怠感や寒がり、むくみ、体重増加、気力の低下に見舞われ、逆に過剰になれば動悸や指の震え、不眠、精神的な焦燥感に苛まれる。こうした「ホルモンの波」に翻弄され続ける日々に、終わりが見えないことへの落胆が後悔の感情を増幅させる。