矢倉楓子のキャリアを語る上で欠かせないのが、アイドルとしての華やかな成功の裏にあった壮絶な家庭環境と、家族に対する並々ならぬ責任感です。彼女がNMB48の2期生オーディションを受けた最大の動機は、「母子家庭で苦しい生活を送る家族を助けたい」という切実な想いでした。
テレビ番組や当時の密着ドキュメンタリーで赤裸々に明かされた「冬場は壊れた冷蔵庫の代わりにベランダで食材を冷やしていた」「家のお風呂が壊れて銭湯に通っていた」という貧乏エピソードは、単なるバラエティのネタではなく、彼女が背負っていた過酷な現実そのものでした。幼い弟に不自由な思いをさせたくない一心で、過密なレッスンや握手会、総選挙のプレッシャーに耐え続けた日々は、ファンの胸を深く打ちました。
2017年10月に突如発表された卒業と引退。その真相について彼女自身は、「やりきったという達成感」とともに「弟の学費を含め、家族を支える基盤が整ったこと」、そして「普通の女の子としての人生を歩みたい」という純粋な願いを語っています。幼少期から「家族の保護者・経済的支柱」として走り続けた彼女にとって、引退とは重責からの解放であり、自分自身の人生を生き直すための前向きな選択だったのです。