「龍の瞳」の物語は、農業の歴史においてまさに奇跡と呼ぶにふさわしい偶然の発見から始まりました。2000年(平成12年)9月、岐阜県下呂市(旧益田郡萩原町)で米作りを行っていた農家・今井隆(いまい たかし)氏が、自身のコシヒカリの田んぼを見回っていた際、ひときわ背が高く、異常なほど大きな籾(もみ)をつけた見慣れない2株の稲穂に目を留めたことがすべての原点です。
当時の取材や手記において、今井氏は「夕暮れの光の中で、その稲株だけがまるで発光しているかのように異彩を放っていた」と振り返っています。採取した籾を丹念に育て、選抜を重ねて誕生したのが農林水産省登録品種である「いのちの壱」です。胚芽の基部が大きく残り、米粒の輝きがまるで龍の瞳のようであったことから「龍の瞳」と命名され、商標登録されました。
発見から四半世紀以上が経過した2026年現在も、栽培技術の進化とともにその神秘的なストーリーは語り継がれており、下呂市の豊かな大地と清流が生み出した「奇跡の米」として全国に名を轟かせています。