事故調査が進むにつれて浮き彫りになったのは、現場の「うっかりミス」という言葉では到底片付けられない、組織的な安全管理の怠慢でした。園内では「トラが寝室に入ったことを目視と声出しで複数人確認する」という基本ルールが定められていたものの、長年の人員不足や作業の日常化により、実際には1人作業の横行や記録簿の形骸化が常態化していました。
さらに深刻なのは、那須サファリパークにおいて猛獣による飼育員襲撃事故が「初めてではなかった」という歴史的事実です。過去の記録を遡ると、同園では複数回にわたる重大事故が引き起こされていました。
過去2度の重大事故を経験していながら、なぜ2022年の事故を防げなかったのか。外部の安全工学専門家が指摘したのは、「人の注意力だけに依存するシステム(ポカよけの欠如)」でした。「鍵を閉める」「目で見る」という人間の注意力は、疲労や慣れによって必ずミスが発生します。本来であれば、扉が施錠されていなければ通路の扉が開かない「物理的インターロック構造」や「赤外線センサー」を導入すべきであったにもかかわらず、抜本的なハード改修を先送りにしてきた経営体質が惨事を招いたと断定されました。