人間の握力ギネス世界記録について調べると、必ずと言ってよいほど浮上するのが「192kg」という桁外れの数値です。この衝撃的な数値を残した人物として語り継がれているのが、イギリスの怪力パフォーマーであるトーマス・ブラックソーン(Thomas Blackthorne)氏です。彼は2004年に公式測定において192kgという規格外の握力を記録し、ギネス世界記録として認定された経緯を持ちます。
しかし、この「192kg」という数字には測定器具の構造に関する重要な背景が存在します。一般的な日本の体力測定で使われるバネ式のスメドレー型握力計は100kgまでしか計測できず、彼らが使用したのは特殊な油圧式、あるいは高荷重対応のロードセル型ダイナモメーターでした。油圧式計測器は手の大きさやレバーにかかるモーメントによって計測値が大きく変動するため、数値が独り歩きしやすい側面を孕んでいます。
一方、都市伝説のように語られる「リンゴを片手で握り潰す」という芸当について、実験データとバイオメカニクス分野の検証は極めて現実的な数値を導き出しています。硬度が高い一般的な品種(ふじ等)を指の腹でめり込ませて破裂させるには、瞬間的かつ局所的な圧力として最低でも約75kg〜80kg、確実に粉砕するには85kg以上のクラッシュ力が必要です。一般男性の平均握力が45〜47kg程度であることを考えれば、鍛え抜かれたトップアスリートやアームレスラーでなければ到達できない領域であることが明白です。