インターネット上の掲示板やSNSでは、時として植物生理に反した剪定アドバイスや施肥の誤解が流通しています。その代表格が「秋に樹形を整えるためにバッサリ切る」という慣行と、「咲かないときはとにかく強い肥料を埋める」という盲目的な対処です。
植物生態学的な見地から見ると、紫陽花の花芽は8月下旬から9月にかけての短日・夜温低下によって、枝の先端付近の芽(頂芽)の内部で分化します。この時期を過ぎた10月や11月に「伸びすぎたから」「見栄えが悪いから」とハサミを入れる行為は、肉眼では葉芽と区別のつかない来年の花芽を物理的にゴミ箱へ捨てる作業に他なりません。
また、「冬越しの寒肥(かんごえ)」に対する誤った認識も後を絶ちません。12月から2月の休眠期に施す有機質肥料は、春の芽吹きを支える重要な活力源ですが、ここで窒素過多の牛糞堆肥や油かすを過剰に投入してしまうと、春先に旺盛な葉の暴走を促す土壌が出来上がってしまいます。冬に必要なのは、根を活性化させ花芽を充実させるリン酸・カリ分を中心とした設計です。
さらに見過ごせないのが紫陽花冬越しの管理です。寒冷地や乾燥したからっ風が吹き荒れる太平洋側の地域では、枝先の花芽が乾風に晒され、水分を奪われてドライフラワーのように枯死する事例が頻発しています。「葉が落ちて枯れ木のようだから放置して良い」のではなく、真冬でも土がカラカラに乾いたら午前中に給水し、強い寒風が当たる場所では寒冷紗を巻くなどの防風対策が欠かせません。