『愛しき日々』が誕生した1986年は、日本のテレビドラマ界および歌謡界にとって大きな転換期でした。日本テレビが総力を挙げて制作した大型時代劇『年末時代劇スペシャル 白虎隊』(主演:森繁久彌、里見浩太朗ら)の主題歌として企画されたことが、すべての始まりです。
当時、時代劇の主題歌といえば純然たる演歌や重厚なインストゥルメンタルが主流でした。しかし制作陣が求めたのは、「幕末の動乱に散った若き白虎隊士たちの純粋さと無情な運命を、現代を生きる大人たちの心情にオーバーラップさせる普遍的な鎮魂歌」という極めて難度の高いテーマでした。
この難題を託されたのが、シンガーソングライターとして独自の美学を持つ小椋佳と、アリス活動休止後にソロとしての新たな表現を模索していた堀内孝雄のタッグでした。当時の関係者の証言によると、小椋佳から届けられた歌詞を手にした堀内孝雄は、そのあまりの深さと切なさに息を呑み、アコースティックギターを手に一気にメロディを紡ぎ出したと伝えられています。
激動の会津戦争で自刃した少年たちの悲劇という歴史的事実を背景に持ちながらも、歌詞の中には直接的な合戦描写や古風な言葉遣いは一切登場しません。「運命の非情さ」「夢破れた後の喪失感」「それでも愛おしい過去への感謝」という、人間誰もが人生の途上で直面する痛切な感情を昇華させたからこそ、ドラマの枠組みを遥かに超えて日本人の心に深く根付くことになったのです。