ドラマ『凪のお暇』(TBS系)は、周囲の空気を読みすぎて過呼吸で倒れた28歳のOL・大島凪(黒木華)が、仕事もSNSも彼氏(高橋一生演じる我聞慎二)もすべて捨てて人生をゼロからやり直す姿を描いた大ヒット作です。この作品のためにmiwaが書き下ろした主題歌「リブート」は、彼女の従来のトレードマークであったアコースティックギターの清純派イメージを根底から覆す、鋭利で力強いロックチューンとして世に放たれました。
当時、制作陣との綿密なディスカッションを経て生まれた本作の歌詞には、単なる失恋ソングにとどまらない深いメッセージが刻み込まれています。
「リセット」ではなく「リブート(再起動)」という言葉を選んだ点に、本作の神髄があります。リセットはすべてを白紙に戻して消し去ることですが、リブートは「これまでに経験した痛みや後悔、泥臭い過去をすべて胸に抱えたまま、システムを立ち上げ直すこと」を意味します。空気を読み続け、他人の顔色を伺って自分を殺してきた主人公が、他者軸の生き方を手放し、自分の足で再び立ち上がる宣戦布告の歌なのです。
家族社会学や心理臨床の現場では、相手の顔色を過剰に伺って自己犠牲を払う心理状態を「共依存」や「心理的バウンダリー(自他の境界線)の崩壊」と呼びます。凪と慎二の関係はまさにこの病理を抱えていましたが、miwa「リブート」の歌詞は、その歪んだ関係性にメスを入れ、自分の領域を取り戻すための強烈なエネルギーを放っています。