「天気予報では過ごしやすいと言っていたのに、外に出たら凍えるほど寒かった」という後悔が生じる背景には、人間の体感温度に関する生理学的・気象学的なメカニズムが存在します。肌寒いと感じる決定的な理由の筆頭は「風」です。気象物理学の「ミスナールの計算式」が示す通り、風速が毎秒1メートル強まるごとに体感温度は約1度低下します。気温16度の環境でも、街頭で風速4メートルのビル風に晒されれば、身体が感じる温度は実質12度まで急降下します。
さらに見逃せないのが、春と秋の体感温度の違いです。同じ気温16度であっても、春(3月〜4月)と秋(10月〜11月)では身体の受容状態が正反対になります。冬の極寒を乗り越えてきた春先は、皮膚の毛細血管が収縮する寒冷順化が残っているため、16度という数字に対して「暖かくなってきた」と脳が錯覚しがちです。その結果、気分に合わせて薄着で飛び出し、急激な冷え込みに打ちのめされるケースが頻発します。
対照的に秋は、過酷な猛暑に慣れきった身体にとって16度は「急激な冷え」として知覚されます。自律神経が急激な温度変化に対応しきれず、血管が収縮して手足の冷えや倦怠感を覚える「寒暖差疲労」に陥りやすい時期でもあります。都市生活者の心理として、春は「軽やかに見せたい」、秋は「季節を先取りしておしゃれを楽しみたい」という美意識が先行し、天候のリアリティを過小評価してしまう心理的バイアスも寒さに震える原因となっています。