西大寺観音院の起源は、奈良時代の天平勝宝3年(751年)にまで遡ります。周防国(現在の山口県)玖珂庄の藤原皆足姫(みなたのひめ)が観音の霊験により建立した草庵が始まりと伝えられており、平安初期の延暦年間には弘法大師空海の手によって現在の伽藍の基礎が整えられました。この連綿たる西大寺観音院歴史の深さは、境内を歩くだけで肌に伝わる重厚な空気感からも実感できます。
寺院の中心に鎮座する本尊は、三十三年に一度しか開帳されない秘仏千手観世音菩薩です。あらゆる人々の苦難を見逃さず、千本の手と慈悲の眼差しで救済の手を差し伸べるとされ、古くから現世利益を求める民衆の心の拠り所となってきました。また、境内の重要な位置を占めるのが、寺院を守護する鎮守神牛玉所大権現(ごおうしょだいごんげん)です。神仏習合の形態を色濃く残すこの社は、強烈な厄払いの霊験を持つとされ、年間を通じて多くの人々が西大寺観音院厄除けの祈祷に訪れています。
寺院関係者の記録によると、古くから授与されてきた「牛玉宝印(ごおうほういん)」と呼ばれる護符は、農作物の豊作祈願や家内安全、病気平癒の切り札として重宝されてきました。この護符の授与こそが、のちに全国へ名を馳せる「会陽」へと発展する決定的な契機となったのです。すなわち、西大寺観音院が授ける西大寺観音院ご利益は、抽象的な観念ではなく、人々の生活に密着した切実な祈りから生まれた生きた信仰の証といえます。