インターネット黎明期から「蓮コラ」と呼ばれる画像が強烈な不快感を引き起こしてきた理由は、個人の好悪や性格の問題ではありません。エセックス大学のジェフ・コール博士らをはじめとする進化心理学研究チームの論文によると、この現象の根底には人類の「脳の防衛本能」が存在していると指摘されています。
研究では、ヒョウモンダコやキングコブラ、ヤドクガエルといった致死性の猛毒を持つ生物の体表パターンと、トライポフォビアを誘発する画像(蓮の実など)の空間周波数特性(コントラストと細かさの分布)が極めて一致していることが判明しました。原始時代、これらの危険生物を一瞬で識別して回避できなかった個体は命を落としました。そのため、脳の視覚野(特に中・高空間周波数領域)が特定の幾何学的パターンを検知した際、意識で考えるよりも早く「危険! 触れるな!」と警告アラートを発するよう進化したと考えられています。
もうひとつの有力な学説が「寄生虫・感染症への忌避反応」です。天然痘や麻疹、寄生虫感染症など、皮膚に無数の斑点や水泡が生じる疾患を本能的に連想させ、接触感染を防ぐために強烈な「嫌悪感(Disgust)」と「皮膚の痒み」を反射的に引き起こします。つまり、鳥肌が立ってゾワゾワするのは、体が病原体から身を守ろうと正常に機能している証拠なのです。