彼女の名を一躍全国区に押し上げたのが、2014年のドラマ『ファーストクラス』(フジテレビ系)における悪女・川島レミ絵役です。心の声を機関銃のような毒舌ナレーションで吐き出す怪演は、視聴者に強烈な爪痕を残しました。さらに翌2015年の『サイレーン 刑事×彼女×完全悪女』(カンテレ・フジテレビ系)で見せた稀代の殺人鬼・橘カラ役は、冷徹な視線と一切のブレがない残虐性でドラマ賞を総なめにする快挙を成し遂げました。
当時、業界内では「悪女役を連続して演じるとイメージが固定化し、その後のキャスティングに悪影響が出る」という懸念の声もありました。しかし菜々緒は「悪女役なら誰にも負けないという領域までやり切る」と腹を括り、オファーに真正面から応え続けたのです。この時期に培われた「表情のわずかな筋肉のピクつき」や「声のトーンを意図的に落とす発声法」などの技術が、現在の重厚な演技力の土台を築きました。
視聴者やメディアの間で演技力の評判が急上昇した背景には、単に意地悪な人物を演じるのではなく、「悪に走らざるを得なかった背景や人間的な孤独」を行間から滲ませる巧みな感情表現がありました。記号的なヒールに終わらない奥行きがあったからこそ、女性層を中心とする熱狂的な支持を集めたのです。