家電売り場で東芝製品を手にした多くの人が抱く「中身は海外製になってしまったのか?」という疑問には、企業組織の構造と生産拠点の2つの側面から明確な答えを出す必要があります。結論から言えば、東芝の白物家電事業会社である「東芝ライフスタイル株式会社」は、中国の大手家電メーカー「美的集団(マイディア・グループ)」の傘下にあります。
この事業再編の発端となったのは、2015年に発覚した東芝本体の不正会計問題と、それに続く米国原子力子会社ウエスチングハウス(WH)の巨額損失でした。財務危機の打開を迫られた東芝は、2016年6月に白物家電を手がける東芝ライフスタイルの株式のうち80.1%を約514億円で美的集団へ譲渡することを決断。東芝本体側が19.9%の株式を保有し続ける形で再出発を切りました。
ここで重要なのは、「東芝という会社自体が中国企業になったわけではない」という点です。発電インフラや産業用半導体を担う東芝本体(2023年末に日本産業パートナーズ(JIP)連合のTOBを経て非公開化)と、生活家電を担う東芝ライフスタイルは、資本上完全に切り離されています。美的集団との契約により、家電製品には最長40年間にわたって「TOSHIBA」ブランドを使用できるライセンス契約が結ばれており、ブランドネームは今も変わらず継承されています。
そのため、「東芝の家電は中国企業が保有するブランド事業」であることは紛れもない事実ですが、現場の開発部隊が一掃されたわけではありません。神奈川県川崎市を拠点とする商品企画や基礎設計チームが製品の根幹を担い続けており、単純なブランドの貸し出し(OEM供給)とは根本的に異なる体制が敷かれています。