NHKのドキュメンタリー番組『プロフェッショナル 仕事の流儀』などで紹介される名人の手元を観察すると、彼らは具材を油から引き揚げる瞬間を感覚で見極めている。家庭で温度計を使わずに油温を確かめるには、落とした衣の挙動を観察するのが最も確実だ。衣を落とした際、鍋の底近くまで沈んですぐに浮かび上がってくる状態が、天ぷらに最も適した170〜180度の目安となる。
揚げている最中の「音」と「泡」の変化も見逃せない。具材を入れた直後は水分が激しく蒸発するため、大きめの泡が立ち上がり低く重い音が響く。やがて水分が抜けていくにつれて泡が小さくなり、音が高く軽やかな「パチパチ」という響きに変わる。この音の変化こそが、水分が抜けきった合図であり、油から揚げるべき黄金のタイミングなのだ。