ネット上の情報やSNSでは、「生麹は生きているから酵素が強く、乾燥麹は死んでいるから効果が薄い」といった誤解が散見されます。しかし、この言説には科学的な誤謬が含まれています。
誤解1:乾燥麹は熱で酵素が死滅している?
前述の通り、製麹工場の低温乾燥設備では、酵素活性が失われる60℃以上の熱を一切加えません。水分を10%以下に落とすことで麹菌を「休眠状態(クリプトビオシスに近い状態)」に移行させているだけです。水分と適正温度(55℃〜60℃)を与えれば、生麹とほぼ同一のアミラーゼ活性を発揮し、しっかりと甘酒を糖化させます。
誤解2:生麹のほうが常に安全で高品質?
実は、生麹には「鮮度劣化のスピードが極めて速い」という盲点があります。生麹は製造後も自身の酵素で米のデンプンを消費し続けるため、冷蔵庫に入れていても時間が経つと自己消化が進み、糖化力が徐々に低下します。さらに、高水分であるがゆえに空気中の雑菌や納豆菌、野生酵母が混入しやすく、管理状態が悪ければ乾燥麹よりも仕込みが失敗するリスクを孕んでいます。
つまり、「適切に管理された新鮮な生麹」であれば最高のパフォーマンスを発揮しますが、「使い切れずに冷蔵庫で放置された生麹」を使うくらいであれば、「管理が万全な乾燥麹」を使ったほうが遥かに上質な発酵調味料に仕上がるのです。