このアナザーストーリーという言葉を、日本のテレビ界における金字塔的フォーマットへと昇華させたのが、2015年にレギュラー放送を開始したNHKのドキュメンタリー番組『アナザーストーリー 運命の分岐点』です。その構成美は、従来の単一的な取材番組とは一線を画しています。
最大の特徴は、ひとつの歴史的出来事を「3つの異なる視点(マルチアングル)」で追体験していく構成にあります。第1の視点では事件の表舞台に立った主役、第2の視点ではライバルや敵対者、そして第3の視点では社会の片隅で決定的な影響を受けた第三者や目撃者へとカメラを向けます。視点が切り替わるたびに、これまで定説と信じられていた歴史の構図が鮮やかに覆され、多角的な人間心理が浮かび上がってくる仕組みです。
丹念な海外現地取材と、関係者への執拗なアプローチによって発掘される一次証言や初公開映像の数々は圧巻です。取材班が掘り起こす「あの時、実は裏で何が起きていたのか」という驚愕の事実。その緻密なリサーチ力が、視聴者に「歴史の目撃者」となるカタルシスを提供し続けています。