政府の地震調査委員会が公表している南海トラフ地震の発生確率は、「今後30年以内に70〜80%」という極めて高い水準を維持しています。この数値は毎年時間の経過とともにわずかずつ上昇しており、確率論的に見れば「いつ本震が発生しても統計的にまったく不自然ではない」極限の警戒域に突入しています。
しかし、なぜこれほどピンポイントかつ高い数値が算出されるのか、その算出根拠を正しく理解している人は多くありません。地震調査委員会が採用しているのは、室津港(高知県)の歴史的な隆起量と地震発生間隔の相関関係から導き出された「時間予測モデル」です。過去の蓄積データから「歪みの蓄積スピード」と「過去の解放量」を計算し、次の破壊までの時間を推定する手法をとっています。
一部の研究機関が用いる単純平均モデル(ポアソン過程)による計算(30年以内確率20〜30%程度)と比較すると、時間予測モデルはより切迫性を反映した数値を提示します。国の防災基本計画がこの高い数値を公式採用している背景には、過小評価によって避難や耐震補強などの事前対策が遅れることを防ぎ、最悪のシナリオを前提に国土強靭化を進めるという極めて現実的な危機管理思想が存在します。