薬局やドラッグストアには「歯槽膿漏・歯肉炎の腫れや出血に」と謳う塗り薬や飲み薬が多数陳列されています。これらを購入し、「市販薬を飲めば歯茎の膿も消えるはずだ」と期待する方が後を絶ちません。
歯茎の腫れに効く市販薬の真相について明確にしておくと、市販の抗炎症剤(トラネキサム酸やグリチルリチン酸など)や鎮痛剤(ロキソプロフェン、イブプロフェンなど)は、「一時的な炎症反応と痛みを緩和する対症療法」に過ぎません。
骨の奥深くで増殖している細菌そのものを殺菌・除去する力は市販薬にはありません。また、日本では医療用の強力な抗生剤(抗生物質)は医師・歯科医師の処方箋が必須であり、ドラッグストアで購入することはできません。市販薬を塗ったり飲んだりして一時的に腫れが引いたように見えても、それは病気の「鎮静化」であって「治癒」ではなく、水面下で骨破壊が進行する貴重な治療期間を逃す原因になります。
さらに深刻なのが、歯茎の膿の臭いと口臭の原因です。歯茎の膿は、嫌気性菌がタンパク質を分解する過程で「メチルメルカプタン」や「硫化水素」といった揮発性硫黄化合物(VSC)を大量に発生させます。これらは腐った玉ねぎや生ゴミにも例えられる強烈な悪臭を放ちます。自分で膿を潰して口腔内に漏れ出させると、膿に含まれる高濃度の悪臭物質と細菌が舌や口腔粘膜全体に広がり、会話時に周囲へ強い口臭を撒き散らす直接的な原因となります。