ドラマ放送中から終了後にかけて、長崎の郷土史家や端島元島民のコミュニティからは、美術セットや脚本のリアリティに対して驚嘆の声が多く上がりました。特に評価されたのは、単に「過酷な炭鉱」という一面的なステレオタイプに陥らず、島全体がひとつの大家族のように機能していた独自の連帯感をすくい上げた点です。
当時の端島には、日本初の鉄筋コンクリート造高層集合住宅である「30号棟」をはじめとする団地群が立ち並び、住民同士のプライバシーの境界線が極めて曖昧でした。鍵をかけない玄関、隣近所で夕飯のおかずを分け合う日常、島民総出で楽しんだ映画館や祭りなど、当時の記録映像や写真資料に残る「活気ある生活の温度」が生々しく映像化されています。
同時に、台風襲来時に島全体を飲み込むような大波(波浪)の猛威や、炭鉱事故発生時に島中に鳴り響くサイレンの恐怖、高品位の強粘結炭を産出する誇りとエネルギー転換(石炭から石油へ)による先行き不安など、島民が抱えていたリアルな心理的陰影も余すところなく描写されました。