生椎茸を調理する際、多くの人が無意識にやってしまいがちな最大の落とし穴が「水道水での水洗い」です。キッコーマンや大手料理研究機関の調理科学データが示す通り、キノコ類は約90%が水分で構成されており、組織内部が極めて多孔質なスポンジ構造になっています。蛇口からの水にさらした瞬間、余分な水分を一気に吸い込んでしまい、生椎茸が本来持つ高貴な香り成分(レンチオニン)やグアニル酸、グルタミン酸といったアミノ酸が水とともに流出してしまうのです。
これが、生椎茸水洗いしない理由の科学的な根拠です。水分を過剰に吸った椎茸は、加熱しても香ばしい焦げ目がつきにくく、ベチャッとした食感に仕上がってしまいます。
失敗を防ぐための生椎茸下処理は極めてシンプルです。汚れが気になる場合は、軽く湿らせて固く絞ったキッチンペーパーや清潔な布巾で、カサの表面やヒダの隙間を優しくポンポンと叩くように拭き取るだけで十分です。現在流通している国産の生椎茸の多くは衛生管理の行き届いた菌床栽培や原木管理のもとで出荷されているため、泥や砂が付着しているケースはほとんどありません。
カサの裏側の白いヒダに木くずなどが挟まっている場合は、軸を持って指先でカサを軽くトントンと叩き、埃を落とすのがプロの現場で実践されている基本所作です。