なぜ藤子・F・不二雄先生は、連載初期の過激なギャグ路線やキャラクター設定を大胆に変更していったのでしょうか。藤子・F・不二雄 設定変更の理由について、先生自身は生前のインタビューやエッセイで「連載開始当初は完全な見切り発車だった」と率直に告白しています。
連載予告の締め切りが迫っても主人公のアイデアが浮かばず、締め切り直前に「足元に転がっていた娘の起き上がりこぼし(だるま)」と「野良猫」が衝突したイメージからドラえもんの外見を着想したという有名なエピソードがあります。アイデアが定まりきらないままスタートしたため、初期は『オバケのQ太郎』の文脈を引きずった「異居候が日常をかき乱すドタバタ喜劇」として描かれざるを得ませんでした。
しかし連載が続く中で、藤子先生は「のび太というダメな少年の成長と心理的葛藤」に焦点を当てることのドラマ性に気づきます。それに伴い、ドラえもん 初期道具と裏設定も単なるギャグアイテムから「人間の欲望の拡大と自制を描くSF的ツール」へと深められていきました。タケコプターが初期に「ヘリトンボ」と呼ばれていたような名称の変遷だけでなく、道具が万能すぎず適度な制限を持つようになったことも、物語の教訓性と面白さを担保するための計算されたアップデートだったのです。