採血の際、第一選択として狙われるのが肘の内側を走る肘正中皮静脈だ。ここは本来、比較的太く表在性に優れるため穿刺に適しているとされる。しかし、解剖学的な研究で知られる浅野嘉延氏らの報告をはじめとする文献が示す通り、静脈の走り方には顕著なパターン分類と個人差が存在する。
一般的に静脈の走る形状は「H型」や「M型」などに分類されるが、人によっては分岐が複雑だったり、皮下深くを蛇行しながら走っているケースも珍しくない。日本静脈学会の学術的知見においても、こうした血管走行のバリエーションは決して異常ではなく、ヒトの解剖学的多様性の一環として説明されている。表面から一本の太い筋として視認しにくいタイプでは、ベテランの医療従事者であっても触診による位置特定に神経を研ぎ澄ませる必要があるのだ。