この重厚無比な建造物の設計意図を読み解く上で欠かせない重要人物が、当時の大蔵省営繕管財局長として中心的な指揮を執った建築家、矢橋賢吉である。彼は国家の威信をかけた巨大プロジェクトにおいて、西洋の様式美を採り入れつつも、日本独自の耐久性と格式の高さを融合させるという極めて高度な難題に挑んだ。その結果誕生したのが、左右対称の美しさと強固な花崗岩で固められた、現在目にする白亜の殿堂だ。
建築の中心に位置する中央大広間へと足を進めると、吹き抜けの天井から降り注ぐ光の中に、日本近代政治の礎を築いた偉人たちの姿がある。中でもひときわ存在感を放つのが、初代内閣総理大臣を務めた伊藤博文の銅像だ。彼の静かな眼差しは、時代が令和へと移り変わった今も、本会議場へ向かう政治家たちの背中を見つめ続けている。四方の角に配された銅像台座のうち、一つだけが空位のまま残されているという事実は有名だが、それは「完璧な政治家など存在しない、常に未完成である」という後世へのメッセージとも囁かれている。