多くの指導者や演奏現場で指摘される盲点が、「音を繋ごうとする意識が強すぎて、音が濁る(オーバラップ過剰)」という現象です。特に残響の長いコンサートホールやアコースティックピアノでは、演奏者が思っている以上に音が空間に残り続けます。
指導現場の実態調査やコンクール審査員の講評でも、「レガートを意識するあまり前の音の離鍵が遅れ、不快な濁音を生み出している」というケースが頻繁に散見されます。真に美しいレガートとは、物理的にべったりと音を重ねることではなく、「前の音の減衰カーブに次の音のアタック音量を精密に合わせる」という音響的な均一性にあります。
耳のトレーニングが不足していると、手の動きばかりに気を取られ、出ている実際の響きを聴き逃してしまいます。「繋ぐ」ことと同じくらい、「前の音をいつ、どのように美しく手放すか」に意識を向けることがプロフェッショナルへの第一歩です。